合気道喫緊録~勝早日

勝速日――ある時は神名として用い、ある時は概念として用いるのが開祖の手法 大抵の者はこの辺で解釈を投げ出す=居眠り、というパターンでした 一音多義の言霊の世界です 自分なりの解釈で工夫しているうちに力量相応の運用の幅を広げてゆくしかない 神名と解釈すると神話になってしまって今の自分との接点がない ただの「お話」になってしまう 開祖は理路整然とした話し方はしなかった 自分なりの解釈や質問をすると「小賢しい事を言うな」だった 「ことぶれせずに悟り行なえ」 わしの動き方を見て自分で考えよ、だった。

「勝早日」をどう解釈しているか 時間と空間に展開する前の存在の根源、これを「ウ」と「ア」と「ワ」の三音 構造としてはウ(大極)がア(主体)とワ(客体)とに分かれる三角形、これを「基礎三角」と読んで、これから万象が発現するというふうに言霊学の世界観だが、武芸としての動きで考えると、敵と自分とが対立する以前の状態 これが「ウ」の次元 相手がこっちの存在を意識した、つまり「対立した」時はもう自分は相手の死命を制する位置(自分の間合い)に入っている、と、こんな形になる これが出会い方の一つ 対立していない時は、見ず、構えず、知らん顔の半兵衛をきめこんでいる これが開祖の、「見るな」、「構えるな」だったと思う  では正面から出会ってお互いに構えた形からはどんな動きになるのか?  わかりやすい次元で工夫する必要がある 対峙した形からは「絶対の先制攻撃」になるのだと思っていればよい いつもやっている、当てない当てで崩して入る「崩しの太刀」 あるいは初撃で相手の反撃を呼び出して入る形(これが燕返し)というふうに展開してゆく。

~野中日文師